まず、あなたの空にありがとうと言いたい
最初にぼくをつかまえたのは、空でした。 山でもなく、氷河でもなく、食べものでもなく、 まず空でした。 あなたの空は、 背景ではありませんでした。 上にあるもの、でもなかった。 町も、人も、道も、港も、鉄道も、 ぜんぶその空の下で少し遠慮しているように見えた。
その感じが、ぼくにはとても新鮮でした。 それまでの人生で、 こんなふうに空が主役である土地に、ぼくは長くいたことがありませんでした。 だから最初は少し戸惑った。 でも、すぐに分かりました。 ああ、この土地では空を見ないと始まらないのだ、と。
あなたの空は、 ただ広いだけではありません。 人の考え方まで広げます。 見上げるたびに、 頭の中の細かい音が少し小さくなって、 代わりにもっと大きいことを考えたくなる。 ぼくが一年のあいだに少しだけ変わったのだとしたら、 その最初の原因は、たぶんあなたの空です。