駅へ向かう朝、ヒロは少しだけ新しい気分だった
ひとりで出かける朝には、独特の静けさがあります。 誰かを待たなくていい。 でも、誰かと分け合う前の期待もない。 そのかわり、自分の気分の輪郭がよく分かる。 その朝のぼくは、妙にすっきりしていました。
花子を極光や氷河へ案内したあとの数日は、 どこか満ち足りていて、 でも同時に少しだけ空白もありました。 誰かに見せる旅が終わったあと、 今度は自分のために何を見るのか。 その答えを探したかったのかもしれません。
駅へ向かう道はまだ冷たく、 空気はぴんとしていました。 でも、心の中には少しだけ春のようなものがありました。 よし、今日はひとりで行く。 ひとりで行くけれど、 きっと何かに出会う。 そんな予感があったのです。