港へ向かう朝、ヒロはかなり張り切っていた
朝は早かったです。 でもぼくは、まったく眠くありませんでした。 花子をホテルに迎えに行く道すがら、 自分でも笑ってしまうくらい機嫌がよかった。 なにしろ今日は、ぼくのアラスカを見せる日です。
花子は厚手のコートにカメラバッグを抱えてロビーに降りてきました。 髪をまとめて、 すでに目が起きている。 さすがです。 写真を撮る人の朝は早い。
「寒い?」 ぼくが聞くと、 花子は外へ出た瞬間に肩をすくめて笑いました。 「寒い。でも、なんか気持ちいい。」 その答えが、すごくよかった。 ああ、今日はたぶん大丈夫だ。 この人はちゃんと、アラスカの朝を受け取る気でいる。
港へ向かう車の中で、ぼくは少し得意げに説明しました。 今日は船に乗る前から油断しないこと。 手袋は一組じゃ足りないかもしれないこと。 外に出ている時間は短そうで長いこと。 そして、船酔いより先に写真を気にしすぎると足元を忘れること。 花子は笑って、 「ヒロ、今日は完全に現地の人の顔だね」 と言いました。 その通りでした。 ぼくはその顔を、かなり楽しんでいました。