花子到着。ヒロ、いきなり案内人の顔になる
花子は、小さな黒いカメラバッグを抱えてやって来ました。 荷物は意外と少ない。 でも、その中身はきっと重いのだろうな、とすぐ分かりました。 レンズ、予備電池、三脚、たぶんフィルター。 写真家の荷物は、見た目よりいつも真剣です。
「ヒロ、寒い?」 到着ロビーを出た瞬間、花子が聞きました。 ぼくは少しだけ得意げに答えました。 「いまはまだ序の口。」 正直、言ってみたかったのです。 地元の人みたいに。
花子は笑いました。 「出た、その顔。今日は案内人モードなんだ。」 ばれていました。 でも、ばれていてもいい夜でした。 だって今夜、ぼくは花子に極光を見せるのです。 それも、ただ車で連れて行って空を見せるだけじゃない。 ちゃんと、 いちばん良い時間に、 いちばん良い場所へ、 いちばん良い状態で立たせたかったのです。